サリンジャーとドストエフスキー   (現代小説と近代小説の断絶について)/yamadahifumi
 
と知っても、彼らはそう考える事をやめられない。何故だろうか?。それは人は、「どこにも行く所がなくても、どこかに行かなくてはならない」からだ。人はどこかへ行かなくてはならない。人生とは旅である。だが、どこに行くのも嘘だと彼らは知っている。彼らは平凡人のように、夢にたぶらかされてはいない。彼らは夢が嘘だと知っている。しかし、彼らは嘘だと知っても、それをやらざるを得ない、あるいはそれをやろうとする。…ラスコーリニコフは二人の人間を斧で殺す。ホールデンは西部へ行く事を企てる。だが、ホールデンはその途中で、それを妹のフィービーに止められてしまう。フィービーは、自分も一緒に西部に行く、と言い張る。ホールデンは
[次のページ]
戻る   Point(4)