サリンジャーとドストエフスキー   (現代小説と近代小説の断絶について)/yamadahifumi
 
スキーの作品はどうだろうか。もちろん、ラスコーリニコフもこの社会に比べたら卑小な個人である。いや、だが、本当にそうだろうかーーー。ラスコーリニコフは、この社会の全ての構造、機能をその脳髄に宿した上で、それから運動するのである。だから、バフチンの語った事は正しい。ラスコーリニコフは、それまでの作者がしていた事をしていたのである。この世界を全部眺め、そしてそれを神の視点から描く事ができるというのは、それまで、作家の仕事だった。それは作家の特権だった。だが、今やそれは主人公の機能として内蔵される。では、この時、この作者ーーードストエフスキーはいかなる機能を有しているか?。この問題はあまりに難しすぎるので
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