わたしと猫と豆の樹?/まきしむ
空はあくまで澄みわたり、風が潮の香りを運んできます。停泊した漁船の上では赤く日焼けした漁師がもくもくと網をたばねていました。
「こんなとこでどうするつもりだい」
「にゃー」
ばあちゃんは何も言わず階段をおり、砂浜をどんどん進んでいきます。物凄いスピードでした。わたしなどもいっぱしのランナー気取りでしたが、次元が違います。
「行こう」「にゃー」
ばあちゃんは、じっと海の向こうを眺めていました。わたしたちが追いつくと、後ろをふりむき、若い女のような声でいいました。
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