ルオー/soft_machine
こまでも孤独で、かなしみのすべてのように見えていた彼女の顔が、もうどう目を凝らしても、安らかな、あたたかい笑顔にしか見えないのだ。
私はずっと彼女を見た。そのあたたかさにつつまれた。そしてもう彼女のかなしみが何であったのかを、もう問いなおすこともしなかった。それがいかに愚かなことか。私がこれまで絵にもとめた答えに、ひたすら立ちふさがってきた謎には、時やことば、生死すらも超えて、ただひたすらに人間を見つめることだけが求められていたのかも知れない。
気づくと私の両目はなみだにあふれていた。私は、ただひたすらに泣いた。
つぎの日、私は仕事場に戻るとまだ濡れている冷たいカンバスを丁寧にぬぐ
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