ルオー/soft_machine
 
ですよ」

 この言葉は、なんという一枚の結末だろうか。絵画がどれほど写実を極めようと、それは木枠とカンバス、絵の具の集合体にすぎず、数百年は形として存在するが、それもやがて朽ち果てる。しかし彼女は、名前も知らない、もう二度と会うこともないかもしれない人々が、彼女をほんのすこしのあいだ眺めすぐに次の絵に向かう、あるいはその色形などを語り合いながらやはり去ってゆく日々をよろこびにしているのだという。そしてどれくらい待つのか──十年だろうか、二十年だろうか──、ことばを交わすこともあるのだと。
 それは、彼女自身の不滅を思わせる言葉だった。私はことばをうしない、ただじっと彼女を見た。するとどこま
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