ルオー/soft_machine
 
ただろう、
「それでも百年も絵の中でたったひとりで、さびしいだろうな」
 そう思った時。

「いいえ、そんなことはありません」

 どこからか女の声がした。
 思わず私はあたりを見回した。
 私の他にこの部屋にいるのは、むこうの椅子でショールを膝にひろげて腰かけた、退屈そうにしている女性職員だけだ。と、すると……、まさか。
 そう訝しんだのも一瞬だった。なぜなら絵の中の女には命があるのだから。生きている人間なのだから、言葉もあって当然だと思い、こんどは心の中で確信をもって訊ねた。
「でも……、ずっとそこで長いあいだひとりで、さびしくはないの」
 すると、はっきりと返事があった
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