ルオー/soft_machine
 
ているようだった。
 カーテンの襞にかくされた、手足をちぢめた蝿のむくろのさびしさ。廃屋の隅で埃をかぶり、忘れさられてゆく鏡の痛み。ルオーは、そんな、人間であれば誰もが裡に秘めた姿を描くことで、それがなぐさめに変わるまで、絵に命を求めたのか。あるいは絵の女がルオーに求めたのかもしれない。もっと描いて、私の命はまだうまれていないから。女はそう言い、ルオーはそれに応えるため、筆を持つ手をはしらせる。この絵を前にして、そう感じるのだ。
 そしてこの限りないかがやきは、一枚の絵の中で永遠に孤独なのだと思うと、それが命のものであってもやはりかなしく、可哀想なことに思えた。
 どれほどこの絵の前にいただ
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