ルオー/soft_machine
き場のない、誰も知る人のいない人間の姿を徹底して描くことで、ルオーはかなしみそのものに手を差しのべているように感じた。あらゆるさびしさの源である、喪失を描くことで。今この瞬間も、人間はありとあるものから失われてゆく証明にすぎないと。そしてそれは、たとえよろこびの中にあっても、過去と未来の狭間の一瞬にある、「いのち」なのだから、と。
ルオーが描きたかったもの。それは「いのち」そのものだったのか。
その色彩、線が、これほど迄に激しいのは、絵に命を宿すため。
その構図、色価が、これほど迄に厳しいのは、絵に命を宿すため。
生きとし生けるものは失われる。だから私は描く。そう、ルオーが言ってい
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