ルオー/soft_machine
 
のか、季節もわからない。時間の連続から切り取られ、永久に閉じ込められた女。過去がなかった女。未来もない女。描かれた瞬間から、女はただそこにありつづけなければならないことを自覚し、女は、そんな自分の内面をはっきりと見ていた。そうして声も立てず、なみだも流さず泣いていた。
 あの日とおなじだった。昔見たあの水彩の女も、この女とおなじようにかなしみに生きていた。それは生きていれば、誰もが一度は味わう、存在の痛み。砂で出来た岩が風にさらされ、ある日突然ふたつに割れて転がるような、深い傷をかかえた孤独。瞳の暗さが、まるで光を反射しない真空の縁に立たされた星のまたたきのように頼りない。そんな、どこにも行き場
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