ルオー/soft_machine
 
考えたように感じられ、直截に語りかける状態だ。そんな時、見る者は余計な解説など加えず、ただ象と色に目を開き、作品が発する言葉に耳を傾けるだけでいい。
 廊下に出ると、ブルデル、ムーア、ジャコメッティの彫刻が、まるで幾何学的な響きを立てて心地いい。別の部屋では、セザンヌやコローが打ち出す強固な平面が、さらに深い興味にかり立てる。どこまでも息がとぎれぬ線で、緊張と弛緩をチェロの弓運動のように繰り返すフジタの細筆は、滑らかな画肌にたなびく霧のようなグレーとあわせ、画面をおだやかに、硬質に造る。そこには薔薇の押葉をかざした母親が、娘たちと黒猫をうっとりと従え、鏡に映した髭面の画家の、軽やかな足どりと鼻歌
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