ルオー/soft_machine
 
二階が美術館になっている。
 十時のしらせで入口に立った警備員が、無線機を口元に近づけると、ひとことふたこと会話し鉄門を開いた。
 建物の中はがらんとし、うしろで音もなく扉が閉まると、外の喧騒が嘘のように静まりかえった。
 緋色の絨毯が敷かれた、やわらかい足音を立てるカーブした階段を一歩一歩のぼっていくと、さっきまでのみじめな気持ちは、それがやってきた時とおなじように、ひと足ごとにどこかへ消えていった。入口の女性に入場券をもぎってもらい、「ごゆっくりどうぞ」という声を聞きながら、左右に開いた六つの出入口が順路となった廊下を進んだ。
 私はひとつ目の部屋の中央に置かれた、十四世紀のものと云う
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