ルオー/soft_machine
 
垂れた、おそらく娼婦。ところどころ、北向きの窓から午後の光を射しこんでいたが、女はじっとうつむき、様々の色がからみあう影の奥へ、声にならず、ベッドに倒れこむこともできず、底も見えない深みへと自分自身を沈みこんでいた。
 その筆は黒々とした線と塗り重ねられた紫や橙や緑、あらゆる陰影に色彩をかがやかせているが、画面中に満ちたさびしさ、足元におちた上着を着ることもできずにいる女の孤独が、なにかとてつもない厳しさに支えられていた。
 私ばぎくりとし、一瞬でその絵に心を奪われた。そしてなぜだかわからない、この画面いっぱいのかなしみをてのひらで包みこむような力強い感覚にもとらわれ、私は自分のこころがゆっく
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