ルオー/soft_machine
っくりとあたためられるのを、たくさんの人波の中、いつまでも見たのだ。
それが展覧会にあった、唯一のルオーの絵だった。私はそれからしばらく、ことある毎にその絵のことを考えた。
あの女はかなしんでいた。苦しんでいた。
あの絵はかなしかった。苦しかった。それなのになぜ、あたたかい気持ちになったのだろう。
熱いものが冷たいはずがない。あかるいものが暗いはずがない。かなしいものは苦しいもので、あったかいものであるはずないのに、どうしてあの絵は大きなぬくみももってぼくを包めたのだろう。
言葉でいくら考えても、答えが出なかった。おさない私に、画家が作品に魂を込めるということが、分かるはずがな
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