少年の話/小原あき
 
ると
必ず帰り道に
誰かに出会うのです

水を必要としている誰かに

その人たちとお話しをするのが
おじいさんになった少年の
唯一の楽しみになっていたのです

おじいさんになった少年の
子供たちには
まだ子供がいませんでしたし
子供たちもまた
自分たちの暮らしで手がいっぱいで
おじいさんになった少年の
相手ができるほど
余裕がなかったのです

おじいさんになった少年は
それでも寂しいとは言いませんでした
いつもにこにこ
誰かに水を譲るために
よぼよぼの身体で
水を汲みに行くのでした

ある日の朝
おじいさんになった少年の子供が
おじいさんにな
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