少年の話/小原あき
 
ました

急いで妻をさがすと
おばあさんになっていた妻は
眠ったように死んでいたのでした

おじいさんになった少年は
いつまでもいつまでも
心の中で泣きました

子供たちの前で
泣くことはいっさいしませんでした
ただ、ひとりになったとき
すこしだけ
ほほに涙を落としました

おじいさんになった少年は
すっかり自分の種のことを
忘れてしまいました

とても大切にしていた妻が
いなくなったからでした

それでもおじいさんになった少年は
もうだいぶ年をとっていたので
朝に水を汲みに行くことはできませんでしたが
毎日水を汲みに行きました

そうすると
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