少年の話/小原あき
たまに妻の植木鉢にも水をあげました
だけど、
とうとう自分の植木鉢に
水をやることはなかったのです
忘れていたわけではありません
みんなが喜ぶのが嬉しくて
つい、自分の植木鉢の水を
譲ってやるのでした
そうしているうちに
お父さんになった少年は
いつの間にかおじいさんになっていました
子供たちも大きくなり
自分で自分の植木鉢に
水をやることができます
子供たちの植木鉢には
それはそれは綺麗な
あの赤い夕日のような
大きな花が咲いていました
いつものように
妻の植木鉢に水をあげていると
それまで見事な薄紅色に咲いていた花が
ぽとり、と落ちまし
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