可能性の地獄/yamadahifumi
 
と、そこにいるのは僕である。つまり、『僕』という個体を認識するのは僕ただ一人であるのにも関わらず、他人から見たら、僕とはその時期とか地位とか、持っている金の大小やイケメン度合いにより左右される何かである。他人にとって僕は複数、あるいは無限に存在するのだが、しかし僕にとってだけ僕は単一である。そしてこの事を僕達はどう変えようもない。だからこそ、今の世の中はせいぜい、美人かイケメンか、金を持っているのかいないのか、そんな事しか問題にならないのだ。つまる所、人間=自己などというものには、(自分から見る以外)何の価値もないので、僕達は出来る限りその外面を取り繕おうとする。そしてそう割り切ってしまえばそれは
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