可能性の地獄/yamadahifumi
 
。そしてそれがうまかったりまずかったりするだろうが、このタイプの人間は、「よりうまくなる可能性」を信じて、翌日にはまた別のカレー粉を手に取る。そしてそうやっている内に、だんだん自分が何をしているのか、元々何をしたかったのかがわからなくなってくるだろう。自分は本当にうまいカレーを作りたいのか、それとも単に、新しい、珍しいものに触れたがっているだけなのか。テレビで紹介されるおいしそうな料理屋に殺到する人は、別にうまいものを求めに行っているのではない。そうではなく、彼らはもっと形而上的に、新しいもの、皆の間に流行っているものに、自分も参加する為に行っているのだ。実際うまいかまずいかは二の次である。こうし
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