可能性の地獄/yamadahifumi
 
としても、僕はA子よりも更に素敵な、B子との出会いを、A子と付き合う事によって失っているのではないか、という懸念に襲われる。そして、この可能性の問題は二つの態度を生む。一つはA子→B子→C子→D子……と、順に違う女性の間を渡っていくというものだ。(もちろん、A男、B男でもかまわない。)だが、その綱渡りはいつまでも続き、次第にこの人間は自分の内に虚無と倦怠を見出す事になるだろう。なぜなら、この男が必死に努力して、より素敵な女性、より素晴らしい女性を目指したとしても、その美しい珠にはいつもどこか一つの傷が見つかってしまう。理想の女性は、くしゃみの仕方一つで、理想を体現したものではなくなってしまう。こう
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