梅雨/蒲生万寿
 


その場を明るくしているというのに



燕は

この雨の止み間を狙って

雛にせっせと餌を運んでいるというのに



烏は

甘えた声を上げる巣立ち雛を従え

生きる術を教えているというのに



この雨粒一つ一つの意味を知らぬまま

人々は朝に溢れ

昼に惑い

夜に彷徨い

一日を徒労に終える



この世の主役を

勝手に買って出たというのに

もはや為す術がない



行き詰まってしまった挙句に

遠くから軍靴の音が聞こえて来る始末

それでも浮世の春は永遠とばかりに

だんまり
[次のページ]
戻る   Point(1)