ヤマダヒフミの消失/yamadahifumi
は取るに足らないものだった。人は自分が理解される事を欲しても、他人を理解するのにはそれほど乗り気ではない。そして他人が自分にとって大切だと感じられるのは、他人が自分を理解しようとしていると感じるからこそなのだ。だから、彼ら、ヤマダヒフミの消失に気づいたメンバーは、ヤマダヒフミが消えた事に対して大した感慨も催さなかった。…こうして、ネット上の「ヤマダヒフミ」という人格は消失した。それは、現実の彼が消えるよりもはるかに簡単な事柄だった。まるで専用のスイッチをひねったかのように、「ヤマダヒフミ」は消えた。そして全ては平静に復した。
…今、桐野は東北行きの新幹線の中にいた。彼は窓際の席に座
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)