ヤマダヒフミの消失/yamadahifumi
に座り、そしてまどろんでいた。昨日までの睡眠不足が祟ったのだった。もっとも、今の彼には乗り過ごすかもしれない目的の駅など一つもなかった。そういう意味では、彼は安心してまどろんでいられた。そして、夢の中では、彼は小学校の頃の先生に怒られていた。それは二十代後半のまだ若い女性教師であり、彼が日頃から好感を抱いていた人物であった。その叱責は、他の教師とは違う、どこか人としての哀れみを含んだものであった。彼は今、夢の中でその教師から、愛のある説教を受けている所だった。彼はまどろみの中で、その教師に対して様々な感想を抱いていた。そしてふと目がさめると、そこはもう関東圏ではなかった。彼はいつの間にか、それまでとは違う世界にいた。それは本当に、彼が今までいた世界とは全く違う世界だった。外には、雪が降っていたのだ。
戻る 編 削 Point(2)