ヤマダヒフミの消失/yamadahifumi
 
れは正に、欲求不満の連続だった。彼は常に、その尊大な自尊心、ないしはその大きな虚栄心を自分の中に感じていた。今の彼は、それが嫉妬心となって外側にほとばしるのをなんとかこらえていた。彼は、その自分のエネルギーを自分で制御するのに手一杯だった。だが、時々それが統御できなくなる事もあった。そういう時、彼は酒を飲んで、大声で壁に向かって叫んだりした。…その翌日には、大家から電話が入り、「隣人からクレームがきている」と言われた。彼はストレス発散の方法を別に考えなくてはならなくなった。

 
 「ヤマダヒフミ」という彼のネット上の人格は、桐野の満たされない心を象徴する何かであった。彼はヤマダヒフミという
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