Mirage/ハァモニィベル
 

彼岸も、此岸も、どんな位相も、多分、彼にはどうだっていいのだから ただ
降り下ろされる金槌だけを埴輪か土偶のように彼は歓迎する
胸の琴線に叩き込まれるような 非在の修羅の謌を

何も知らぬまま気づくと水黽は、迷い込んでしまっていた
靄となって禁酒法下の街の中へ。住人たち全員がアル中の街路では間の手が飛び交う
年代物のハイヤーム製腕時計サーキーも、ポエム社製の最新ウォッチも区別がつかず
空に何か渦巻いて沈黙しない限り、普段は揉みしだくような批評が取交わされている
コメントはむにゅむにゅし、時に鋭そうなペロスチャスチャスチャという鈍い音が響く

雨を待ちながら水黽は、カラカラ
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