ミシェルウェルベック『素粒子』書評/yamadahifumi
 
の時代であり、彼らの優れた脳髄により、この現代は様々に切り裁かれる。そして、僕達個人は、各々が自分が幸福になる事しか考えていないので、このような人物に対して、ほとんど注意を払わない。このように、歴史の陰に隠れて、周囲に愛情を与えて生きた人物をほとんど見てもいない。僕達は自分が幸せになる事しか考えていない。今の『国家の為』などと言っているイデオロギスト達も結局は自分が幸せになれない事に憤って八つ当たりしているだけだ。だが、ウェルベックはこの人物に注目を向けさせる。何故、僕達はこの人物を忘れていたのだろう。何故だろうか?。…だが、その問いは長くは続かない。なぜなら、このような人物はあくまでも平凡な人物
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