ミシェルウェルベック『素粒子』書評/yamadahifumi
ようとしている。ウェルベックはその事を告発しているように見える。実際、この小説の登場人物達はそれぞれが自分の事を考えているので、この祖母の死に対して、それほどの注意を払ってはいない。もちろん、そこには肉親に対する普通の悲しみはあるのだが、しかし、この祖母をこのように注視しているのは、ただ作家ウェルベック一人だけなのだ。ウェルベックはここで、僕達に向かって告発している。何故、僕達はこのような凡庸だがーーーしかし、同時に非凡で重要な人物を見捨てようとしているのか、と。ヨーロッパに様々な哲学があり、それこそヘーゲルの歴史哲学から、フーコーの構造主義的な歴史の見方まで様々な見方がある。現代はインテリ達の時
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