ミシェルウェルベック『素粒子』書評/yamadahifumi
そして一方の、弟のミシェルは分子生物学者であり、彼はただ、学術の研究のみに自分の生涯を捧げた男である。だが、このミシェルもまた、ブリュノよりも幸福な人生を送ったという事も全然ない。彼は人を愛する能力に欠けていて、アナベルという本来生涯の伴侶になるような女性と運命的なめぐり合わせをするのだが、しかしミシェルの方に人を愛する能力が欠けている為に、ミシェルはアナベルを突き放す。そしてアナベルはミシェルの手から離れ、様々な男の元を巡るが、この男たちはどれも動物的な、獣的な人間ばかりで、アナベルもまた人生の悲惨さと滑稽さの中に突入していく事になる。アナベルに、「私はもう程度のいい家畜のように扱われる
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