ミシェルウェルベック『素粒子』書評/yamadahifumi
突っ走り、そして彼氏ーー彼女がいるという事は一種のヒエラルキーのようになっているが、しかし、結局、恋愛は僕達に何も与えなかった。若いころは喜びにむせび、そして年を取れば、若者から疎外され、ただもう惨めな気持ちに陥る。この本の中に、「これまでの時代の中で、これほどまでに人が年齢というものを意識した時代はなかった」という文章があるが、この一行は僕達にものすごく辛い思いをさせる。僕達がこの本を読んで、辛い思いを感じないとしたら、正にその人間はこれからの人生で、一生をかけて、その辛い思いを味わわされる事になるだろう。真綿で首を絞められるように、ゆっくりと。そしてそれはほとんど避けがたい事なのだ。
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