ミシェルウェルベック『素粒子』書評/yamadahifumi
情けないものに終わる。なぜなら快楽というのは結局はあくまでも一時的な夢であり、覚めなければならない甘美な夢であり、そしてはっと目を覚ませば、すぐにこの人物は自分の滑稽さ、愚かさを自覚せねばならないからである。このブリュノの描写は、僕達にとても辛い経験を強いる。思えば僕達は『恋愛』などというものに過剰な価値を与えすぎていた。僕達は恋愛と性的快楽に、資本主義の強いる価値観とあいまって、これらに異様な価値を置き、そしてそこでこそ僕達は幸せになれると信じて走ってきた。そして、それは現代の唯物論と見事に合致している。『恋空』という恋愛小説があるそうだが、そういうものを考えると、僕らは恋愛を求めて動物的に突っ
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