トランジット(窓辺で相変わらず夏が狂っている)/ホロウ・シカエルボク
 
前に行方が判らなくなっていたものが出てくる、探していたことももう忘れていた、無意識なだけではいろいろなものを失くしてしまう―無意識を意識的に操作しなければならない、矛盾なんて当り前に存在するのだ、矛盾なんて当り前に存在する、それを認めないというのであれば、きちがい扱いされても文句を言うことは出来ないさ、そんな風にしてひとかけらが忘れられて行く、ブルース・ハープのベンディングのような―経過―表通りに面したこの部屋ではひっきりなしに救急車が行き来する音が聞こえる、けたたましいサイレンの中で誰かが苦しんでいる、何度も何度も、ギリギリの感情を彼らは運んで行く、清潔なストレッチャーに乗っけて…雨が降り続くと
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