トランジット(窓辺で相変わらず夏が狂っている)/ホロウ・シカエルボク
くという話だった、だけど黒雲は疲れてしまったのか、空に浮かんではいるけれども機能してはいない、窓辺で夏が狂っている、近くの商店で世間話をしている年寄りの声が聞こえる、そこにいない誰かや事柄について話せば、それが問題意識ということになる、あまりその店の前を通り過ぎることはしない、大きな河沿いの住処なので、下手をしたらひとつ西か東の橋まで派手な遠回りをしなければならなくなるけれど、ささやかな煩わしさに比べればそんなことたいした苦労じゃない、学校が早く終わったのか、大声で話しながら自転車の学生たちが通り過ぎる、彼らには加護された自由がある、学生ときちがいと老人、彼らのことをうらやましいと思うことはない、
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