混迷錯雑した小説論/yamadahifumi
 
れ、そしてその現実そのものを超越的に見下ろすそのような視点を自分の中に持たなければならない。なぜなら、この視点こそがその自意識の別名なのだから。現実を否定するには、現実を知らなければならない。もちろん、現実を肯定している作者というものを考えても差し支えない。いや、差し支えないように見える。だが、実際はそうではない。主人公の意識が周囲の現実から抜け出す為には、主人公の自己意識が周囲を一旦否定しなければならないからである。こうして、主人公の自己意識はまず最初にこの世界から切り離される事になる。彼は独自性を求める。よって、世界から離れる。だが、この主人公はやがて自分の独自性を悟り、そしてまたこの世界の中
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