混迷錯雑した小説論/yamadahifumi
う。ここでは、痛み=生命感覚に溢れた余白、という暗喩がそのまま詩人の心象の表出となっている。そしてこの詩は、戦争という痛みある時代を生き、そして『痛みなき』戦後の、その時代というものに疑問を抱いている詩人の人生そのものが凝縮されていると言っていい。ここで詩人は痛み=生命感覚に溢れた余白、というシンプルな暗喩を使っている。先に僕は詩における言葉は像を作らなくて良いと言ったが、ここでは小説とは違う像の使い方が現れているのだ。つまり、ここでは「痛み」という実在的なものと「生命感覚に溢れた余白」という抽象的なものとが二つに結び合わされている。そしてこの暗喩を理解しなければ、詩を理解した事にならない。そして
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