外科医より君へ/yamadahifumi
 
君はあれを書いた後、以前よりももっと惨めな気持ちになった。自分のみすぼらしさが明らかになった。君は、画面の奥の華やかな人達をモデルにして、そしてその姿と自分とを比べて、そうして三十越してもまだ何者でもない自分を疎ましく思った。そうだろう?。でも、君はその自分の感情からも逃げ出した。全く、君はいつも逃げ出してばかりだね。君はこれまでずっとそうやって、自分から逃げ出してきた。自分から逃げ、他人からも逃げ、そうして今世界からも逃げ出そうとしている。君の顔は次第に険しく、鋭くなりはじめ、その言葉はギスギスとし始めてきた。君は満たされいない思いのまま二十代を終え、そしてその気持ちを三十代に持ち越した。そして
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