あれかこれか/ハァモニィベル
ノブにしがみつく。手に、全身の体重がかかったまま、宙ぶらりんの状態になった。下を見る余裕などない。何とか足を元の廊下へ、足を廊下へ、と思い切り蹴り上げてみたが、大きく失敗し、その弾みで手はノブをカラダごと滑った。扉は意志を持ったように強烈に閉じて、巨大な音を立てた。私は落下を覚悟して、身をすくめたが、瞬間すぐに、腰と背中が硬い平面にぶつかり、私は痛みより安堵を感じたが、その衝撃と恐怖から、さらに肩で2,3回横に転がった。――どうなってる?
見回すと、何事もなかったように部屋があった。
だが、今度は部屋の中のどこにも扉が無かった。
一体、どうなってる?さっきは部屋が消えたのに、今度は扉が消
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