あれかこれか/ハァモニィベル
。こんな逡巡を何度めぐらしてみたところで、結局、ここしか扉はないと本当は、解ってはいるのだ。 ・・・恐らくここは、西洋式の古い城館ではないだろうか。理由は、この全体の雰囲気もあるが、扉が、部屋の内側に開く造りであることから、そう考えられた。城は侵攻された場合の合理性から、敵を押し返しやすく、中から障害物を置いて抵抗しやすい、こうした内開き式が普通だ、と聞いたことがある。
私は、思い切って、ノブを捻ると、〈扉〉を押し開いた。
中に入ろうと、一歩踏み出した時、部屋が一瞬で眼の前から消えた。足が、突然、宙に浮く――その感覚とともに、反射的に掴んでいたドアノブを握りしめた。必死に両手で内と外のノブ
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