あれかこれか/ハァモニィベル
 
苛立っているな、きっと。そんなデュパンの推理が過ったが、(しろつるばみ)だよと教える前に、もう、飽きてしまったのか、彼女の画面は、既に、或る投稿サイトの今月の勉強会のページへと移っていた。
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そこでは、〈赤〉をテーマにした詩についての創作や読解が行われていた。さっきの暗号文が、すべて〈日本の伝統の赤色〉で配されていることに気づき、ミステリの謎を解くかも知れないと、フェラーリのように赤い服を着た彼女の顔を見ると、綺麗な瞳を輝かせた、〈赤〉に無頓着な美女が、そこにいることに、こちらの方が気づいた。
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彼女は、勉強会の記事を熱心に読んでいる。まさか。参加者ではあるまい・・・。
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