六月三十一日/飯沼ふるい
。テレビのボリュウムを下げる。子供はおとなしく、アニメでも見ているらしい。明日の朝、アパートの前をパトカーと救急車の列が塞ぐのを見て、子供は訳の分からない不安に怯える。そんなことはない。全て滅多に飲まない焼酎のせいだ。事実は通り魔と、家族の数だけセックスがあるということ。通り魔は僕の妄想ではない。通り魔はいる。通り魔とのセックス。ペニス。通り魔の数だけセックスがある。死ぬというセックス。血濡れたペニス。家族という神話体系。通り魔が僕を煽る。僕を犯す。僕には十時間後、旗振りの仕事が待っている。テレビを消す。通り魔が消える。ペニスが消える。
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振り向いてほしくて
彼のエプロンを掴んだけ
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