対/ホロウ・シカエルボク
 
べての景色を見飽きていた、そしてそれはどれだけ待っても、どれだけ歩いても少しも変化する様子を見せなかった、立体的にプリントされた風景の中を歩いているみたいだった、ともすればそう思い込んで、現実と虚構の一線を踏み外していただろう、それほどに釈然としない連続だった、時折吹く風と、それが引き摺ってくる生臭い血の臭いがどうにか現実を繋ぎ止めていたのだ


思考は意識的に遮断されていた、何かに気づくことを避けているみたいだった、畏怖から身を隠す猫のようにじっとしていて…わずかな予兆も取り逃すまいと緊張を維持し続けていた、でも、やがて訪れるのかどうか判らないその畏怖が、果たしてどういう種類のものなのかと
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