スコールの、始まりのよに/ホロウ・シカエルボク
みなかったしさ…まぁいいかって歩いてたんだー手前数十メーターのところでカンカンと鳴り出して、遮断機が静かに下りた、あぁ、引っかかっちゃった、とガッカリしながらそこに向かってのんびり歩いていた、そしたら…電車の姿が線路の西に見えて、みるみる近づいてきた瞬間に、遮断機の向こうにいた一人の男が線路に飛び込んだんだ、あのとき男の隣にいた若い奥さんの表情は印象的だったなぁ…それはともかく…凄まじいブレーキの音がして、電車はなんとか止まろうとしたけれど間に合わなくて、男の身体は車輪の間でてんでばらばらに好き放題転がって、首がぽおんとぼくの正面に飛んできて、ちょうどぼくと向き合う形できちんと立つみたいに落ちたん
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