赤から青のメルヘン/ハァモニィベル
 
と想念が、それもどうでもいいようなものばかりが、湧き上がって来るのを抑えられないのだ。《ギュールズは、紋章学における赤色を表すティンクチャーであり》と、書かれていた難しげな書物の文章を、突如、思い出した。辞書を引いてみると、「ティンクチャーとは、紋章学における紋章の色のことである」とあった。ならば、なんで最初から<ギュールズとは紋章の赤のことだ>とスッキリと書かないのだろうか、カール・ポパーは、「ものごとを簡潔に明晰に語ることが必要である」「 仰々しいだけで不明晰な表現は犯罪的な行為である」と言ってるのに、と頭にきた一昨夜の記憶が突然蘇ったのだった。西洋中世の古典的な白黒印刷においては、模様で色を
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