赤から青のメルヘン/ハァモニィベル
 
色を表徴する必要があり、その方法であるペトラサンクタでは、赤のことを「ギュールズ」というから、さしずめ、わたしは、ギュールズ頭巾ちゃんね。嫌だわ、変よ。そう思ってちょっと、ニヤッとした、その時。それを見たオオカミは、その不気味さにちょっと怯む様子をみせた気がする。でも安心はできない。バシュラールによれば、《あらゆる認識は近似的認識にすぎない》のだから。赤ずきんは眉をキッとつり上げながら、目の前のウルフに対抗するように、さらに意識の流れを続けた。そうよ、赤はチャンピオン・サイドの色、負けないわ。古来から、民俗学で赤は「魔除け」の意味をもつとされているのよ。……そう自分を励ましながら、赤ずきんはそっと、でもしっかりと、大切な〈飛騨の猿ぼぼ〉を小さな両手でカタク握った。




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