赤から青のメルヘン/ハァモニィベル
と。そう少女は思いながら、万葉集にうたわれた紅花=末摘花が、《華やかだが色あせしやすく,若い愛人の例えに使われた》のを思い出すといよいよ、〈赤〉の悲惨な系譜ということにも、何となく我が身を思って、さらに戦慄を重ねた。ああ、わたしが、深海魚ならば、こんな派手な色をしていても、見えなかったろうに。波長の長い赤しか届かない、赤っぽい深海ならば、そう思うと悔しくて、涙と怒りがこみ上げて来るのだった。すると、自分でもなぜだか不思議なくらい無関係なことが思い出されてきては、どんどん、増々、切迫した現実の中に居る我が身が、まるで凄く凄く不幸な、同情を禁じ得ない赤の他人のようにさえ思えるほど、頭巾の中では渾々と想
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