僕は君と、めがねの置き方を知らない/赤青黄
 

「盗まれた」
「売った」
「かった」
「捨てた」
「たべた」
(うそだ)
「渡した」
「落とした」
(捨てた)
「ああ、あれか、病院に寄付した」
「なんで?」
「あれ、老眼鏡やろ?」

 言葉を交わす度に人の強かさを感じながら、僕は暑い日ざしの中、丘の上にある病院まで歩いていった。酷く汚れたガラス扉の、古ぼけた音を出す自動ドアをくぐると、すぐ小さな受付に座る一人の女性と目が会い、とりあえず頭を軽く下げた。彼女の隣にはメガネ置きが置いてあり、そこにめがねがあった。

 「すいません。」
 「なんでしょうか」
 「これ、僕のめがねなんです」

 僕はことのあ
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