箱庭にて 序章 (未完成)/黒ヱ
 
かった。ただ一つ、どうしても焦心が勝り目の前に木立の陰が見えてしまう事が容易に考えつくからである。
ふと気がつくと、二つの飛び交う小さな影が見えた。顔を上げると仲睦まじげな蒼色の鳥が二羽、歌いながら飛んでいた。その歌を吹くもの達に青年は妬ましさを覚えたが、転じて、これは何かの導きになると発想した。
青年はその思いつきに立ち上がり思考を止めまいと発熱をした。どうすればいい。こいつらは何をしているのか。また、何を経て至っているのか。青年の思念は何度も流転しては渦を増し、色を濃くしては積み上げていった。
 何度も昇るものが沈むものとなり、また新たな昇るものと声を交わした後、青年はある見解に至ること
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