【小品】囚われ/こうだたけみ
出していた男は、今度は可哀想なことに、腰まで地面に垂直にめり込んでいた。
危機を脱したことにほっとして、でも次の瞬間、後頭部の右半分が痺れるような感覚に襲われる。私はおまじないを教えてもらったが、その続きを知らないことに気がついたのだ。そうだ、もう二度とあの男と目を合わせてはいけない。私は足早に男の脇をすり抜けた。
その道は、私のアパートまで続いている道だった。ここからはまだアパートは見えないが、私は両手の荷物を持ち直し、目的地を見据えるつもりで顔を上げた。すると、私の帰路に三メートルほどの間隔で、どこまでもあの男がめり込んでいるのを見てしまった。
「やあ」
私が横をすり抜けるたびに
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