かくも愛すべき水底の。/ホロウ・シカエルボク
て。それは違うよと俺は思った。でも何も言わなかった。説明してしまえばそれはイデオロギーに過ぎないからだ。「その陰鬱さが僅かな救いをうたう為にあるんだよ」なんて言わなかった、そんなこと、文脈から外れたところで話したって何の意味も無いんだ。読めたらオンの字、読めなかったら残念でした、それ以上のことは小細工に過ぎないよ。おい!と恋人たちの死体が飛散した砂浜で誰かが叫んだ、「予言者の姿が無いぞ!」ああ、なんて馬鹿な…なんて馬鹿な野郎なんだ…あいつはきっとなにか、それ以上のことを声高に叫ぼうとしたのだ、そしてバランスを崩してしまった、喋りたいことに気を取られて、足元に注意を払うことを忘れたのだ、ただでさえ呑
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