血人(ちびと)/ホロウ・シカエルボク
 
い、おれは
おれは何らかの手段としてこれをやっているわけではないのだ


血にまみれていると母親を思い出すだろう
その中を泳いでいると父親を思い出すだろう
血まみれの世界で懸命に泳ぎ続けていると
おれであることを思い出すだろう
おれは常に忘れ去られようとする
おれそのものと日常はリンクすることはないからだ
朦朧とした肉体が移動するあいだ
おれそのものは嵐に耐えるようにどこかにしがみついている
一度はぐれたら終りだ、一度はぐれたらそれでお終いだぜ
そこに残された肉体はおれがもっとも忌嫌うものでしかなくなる
おれはしがみついている、懸命に
懸命に血の海を泳ぎ続けるために
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