【HHM2参加作品】舌平目のムルソー(suigyo)を散瞳する/澤あづさ
 
大する視野(※結果は同じ)

「君はわかっているのか。一体本当にわかっているのか? 誰でもが特権を持っているのだ。特権者しかいはしないのだ」かつて異邦人のムルソー(死と太陽)が、マグリブ(日の沈むところ)でそのように述べたそうだ。日の沈むらしい北アフリカでも、日いずるらしい極東でも、智者も悪人もみな自我に迷執する凡夫だ。
 地球が回るように万物は流転するのに、自我だけが不動でいられるわけがない。かつての【私】が、いまの【私】ではなかったように、【私】はいまやがての【私】を知らない。そもそも「いま」とはいつだろう、そして【私】とはだれなのだろう。【吐き出された私の血溜まりにはたくさんの外人の瞳
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