【HHM2参加作品】舌平目のムルソー(suigyo)を散瞳する/澤あづさ
 
自我のなかに、ふるい落されふり落ちる【かつて】(過去)の灰が、語り手の眼中では【ひかり】である、光明であるという事態が【夢ですらない】。語り手は、あるいはこの詩は、自身がみずから切り捨てた過去に照らされる【影】でしかなく、未来永劫不動である。
 この詩の眼中では、そのように脈絡がついてしまっている。

 別の脈絡を当て込めば、【空から降ってくるひかりの鱗粉】は、白内障で曇った水晶体から眼底へ「羞明」が降り落ちるかのようでもある。
「鳥目」をねじ込まれて死体のようにひらいた瞳孔を通り、「明るきを羞じる心」をふるい落とした水晶体を通って、眼へ大量に入射する「眩」しい【ひかり】。
 その熱が網
[次のページ]
戻る   Point(6)